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「週刊朝日」橋下徹大阪市長連載記事に対する意見書

「週刊朝日」橋下徹大阪市長連載

記事に対する意見書 

      -マスメディアの誤った部落問題認識を正す-

 

 

 

はじめに

 

 私どもは神戸を拠点として地域住民運動を進める全国地域人権運動総連合(前全国部落解放運動連合会)神戸人権交流協議会(人権連神戸)という人権団体です。

 すでにご承知のとおり、神戸市は全国で最大の「同和地区人口」を抱えながら、公正・民主・公開を原則に同和行政を推進し、全国に先駆け同和行政を円滑に終結させた自治体であります。こうした実績は、全国の自治体から「同和行政の灯台」という評価を受け、同和行政の終結をめざす自治体の目標となっています。

 私たち人権連神戸は、この神戸市の同和行政の確立期から見直し・終結までの全過程において、「解放同盟」などのいかなる妨害や介入を排し、支えてきた団体です。

 以上のように真に部落問題を解決するために責任を果たしてきた人権団体として、黙過できない問題が今回の「週刊朝日」(10月26日発売)による橋下徹大阪市長に対する「差別記事」(まがいという意味で「」をつけました)です。

 「週刊朝日」(11月2日発売)の「おわびします」では、「同和地区を特定するなど極めて不適切な記述」により、「橋下徹・大阪市長をはじめ、多くのみなさまに不快な思いをさせ、ご迷惑をおかけした」ということで連載の中止を決定したとありますが、記事そのものが「差別」であったという反省はありません。

 部落問題解決を標榜してきたマスメディアの代表格である朝日新聞の子会社「週刊朝日」が、なぜ今回のような「差別記事」を掲載しながら「不適切な記述」としか認識出来なかったことには、この「差別記事」が生まれた根源に、朝日新聞の部落問題に対する基本的認識の誤りがあることを、はっきりと指摘せざるをえません。

 朝日新聞はこの特集の問題点について「報道と人権委員会」(朝日新聞第三者機関)を設置し「徹底的に検証する」と言明しています。この検証が、これまでの古い硬直した部落解放運動理論の影響を断ち切り、部落問題の最終的解決に真に寄与できる朝日新聞になられるよう期待して、以下の通り問題点を指摘し、改善を求めます。

 

1、「週刊朝日」の「差別記事」は朝日新聞の
  
  部落問題認識の間違いにある

 

 朝日新聞の部落問題認識の問題点については、私たちはこれまでも批判をしてきました。最近でも昨年夕刊で掲載した『差別を越えて』(2010年1月19日から29日)については、人権連神戸副議長の鳥飼慶陽氏が執筆担当者宛に詳細なコメントを提出し、部落問題認識の問題点を指摘しました。

 また、水平社宣言から90年を記念した特集とされた『私たちの水平社』(2012年3月5日から8日)についても、人権連神戸として意見書を提出し、前記と同様に誤りを指摘しました。その誤りとは「被差別部落」「部落出身」という現状認識です。「被差別部落」というのは、日本国内において、歴史的・社会的な理由により、差別を受けてきた「特定の地域」のことです。

 戦後の人権と民主主義運動の前進、同和対策による格差是正の進展により、「特定の地域」とその出身者に対する差別・偏見は急速に解消に向かっています。さらに、都市部だけでなく農村部においても混住化が進み、「特定の地域」において「被差別意識」「被差別体験」のない人々が増え続けており、「特定の地域」はいまや崩壊寸前となっています。

 こうした変化を踏まえず、「被差別部落」「部落出身」という認識に基づく用語を使用し、部落問題を報道することは、「被差別」「差別」の区分けを無理やり日本社会に残そうとするもので、部落問題の解決を促進するどころか、逆行させる結果となっています。明治時代と今日とでは「特定の地域」の実態は大きく変化しており、それを無視して同じ現状認識と、それに基づく表現を続けるというのは極めて非科学的で浅薄といわざるをえません。

 今回の「週刊朝日」の「差別記事」の根底には、この「被差別部落」「部落出身」という現状認識があります。この立場に立つならば、橋下徹氏の父親が「部落出身」であることが事実であれば、このように報道することにはなんら問題はなく、橋下徹氏にこの事実に基づく記事を批判する権利はない、と考えるのも極めて当然のこととなります。

 その結果、「週刊朝日」の「おわびします」は、橋下徹氏の出自を暴き人格と政治的態度を攻撃したことよりも「同和地区を特定するなど...」が主となり、「不快な思いをさせた」という程度の認識となるのです。

 しかし、私たちはこの記事は「差別記事」であると認識しています。部落差別は解消に向いつつあるのに、その変化を無視して旧態依然とした「被差別部落」「部落出身」という用語を使い、

 1,本性をあぶりだす」として、橋下徹氏の人格や政治的態度を攻撃する手段として、父親が「同和地区出身」であることを利用したこと。

 2,売らんがために、「時の人」橋下徹氏の出自を扇情的かつ低俗な見出しを掲げ、大々的に宣伝することにより、国民の一部にある遅れた偏見や差別意識を煽りかき上げたこと。

 3,やくざ」「自殺」「殺人」など、日本のどこにでもある社会的問題を「被差別部 落」の特徴であるかのように描き出し、混住が進み差別の垣根が崩壊し、交流と連帯の広がる「同和地区」に分断と分裂を持ち込んだこと。

という理由からです。

 

2、朝日新聞と「解放同盟」は「兄弟」なのに
  
  なぜこんな記事を出したのか

 

 この二つの組織に共通しているものは、いうまでもなく部落問題に対する現状認識です。その現状認識とは「被差別部落」「部落出身」を固定的・運命的に捉え、日本国民の中に依然として部落に対する根強い「差別がある」というものです。

 差別は完全に無くなったとは言えないでしょうが、「差別がある」という表現は曖昧で、正確に質量を現す表現ではありません。部落問題の現状認識で必要なのは「どれだけ」「どの程度ある」のかをありのまま認識し、分析し、正確に表現することが必要です。それによって、運動の内容や方法も報道のありかたも変化させなければなりません。

 ここで分岐が始まります。「差別がある」としても「差別は解消に向っている」という立場と「差別は潜在化し、悪質化している」とでは、その意味は全く違ってきます。「解消に向っている」という認識に立つならば、交流と連帯の進む「特定の地域」に「被差別部落」「部落出身」などという概念を敢えて持ち込む必要はありません。

 「差別は潜在化し、悪質化している」という立場に立つなら、同和対策や同和教育は依然必要となり、「被差別者としての自覚」に基づく団結と運動も必要になります。そうした立場からいえば、公人である橋下徹氏の父親の出自を報道することは大きな問題ではありません。むしろ正々堂々と出自を「告白」して部落問題解決に寄与すべきだという主張さえ成り立たないことはありません。

 橋下徹氏は大阪府知事当選時の「解放同盟」迎合と同和対策継続の態度を豹変させ、市政改革において同和対策の削減を進めようとしており、「解放同盟」にとってそれは我慢できないことかもしれません。

 一方の朝日新聞も「解放同盟」と同じ「差別は潜在化し、悪質化している」という現状認識を持っているために、報道の視点が「解放同盟」と同じ方向にならざるを得ず、「差別探し報道」の迷宮に陥っているのです。

 朝日新聞と「解放同盟」は同じ親を持つ双子の兄弟のようなもので、持ちつ持たれつで、これまで様々な局面で「解放同盟」を支援し、擁護する報道を行ってきました。その典型的な連載記事が、前記の『差別を越えて』『私たちの水平社』などの特集です。

 この特集は、大阪の「飛鳥会事件」をはじめとする「解放同盟」による「同和利権・犯罪」が発生して国民的批判が広がり、「解放同盟」が組織的危機に遭遇している中で掲載されたもので、異常なほど「解放同盟」の理論や行動を正当化する内容になっていることは周知の事実です。

 今回の「週刊朝日」の特集記事をよく読むならば、橋下徹氏の父親が「部落出身」でやくざであるなどと書くことで、橋下徹氏の人格と政治的態度を攻撃したことなどは大した問題ではなく、むしろ橋本徹氏は「部落出身らしく『解放同盟』に協力しろ」というメッセージのようにもとれるのです。また、蜜月関係にある朝日新聞の子会社である「週刊朝日」が本社の了解も無く単独でこのような特集を企画し、掲載したというのは極めて疑問であり、その解明も待たれる所です。

 

3、朝日新聞は「同和地区」が何かわかっていない

 

 橋下徹氏に対する「週刊朝日」の記事が「差別記事」であることきは明確です。しかし、「おわびします」ではそのことを明確にせず「同和地区を特定した」ことを反省していますが、この記事にある「同和地区」はすでに「週刊新潮」(2011年の11月3日号)に書かれており、そのことを理由に今回の連載をここで中止するのは極めて不自然なことです。

 「同和地区」というのは同和対策事業を実施するために決められた区域のことであり、多くの場合かつての「被差別部落」と重なります。そこで、「被差別部落」あるいは「同和地区」という呼称は同義語として使用されてきました。

 しかし、前記のように実態としての「被差別部落」も崩壊しつつあり、同和対策が終結した自治体が多くなりつつある段階においては、どちらの呼称も正確に実態を表わす呼称ではありません。敢えて呼称するならば「かつて同和対策が行われていた地区」という意味で「旧同和地区」とするべきです。

 しかし、依然として現在も同和対策を行っている地区については「同和地区」という呼称を使用し、地区を特定しても構わないし、甘んじて受けるべきであると考えます。なぜなら、同和特別法が終結して10年も経過しているにもかかわらず、市民の税金を投入して同和対策を継続しているということは、行政だけでなく「同和地区住民」と地域の運動団体の側にも責任があり、その責任を明確にする必要があると考えるからです。「同和対策はやれ、地区名は出すな」などという甘い考えはこの際捨てるべきであると考えます。仮に「週刊朝日」記事中の「安中地区」が依然として同和対策の対象地区となっているとしたら「特定された」としても止むを得ないことであり、「週刊朝日」が連載を中止する理由とはならないと考えます。

 「旧同和地区」という認識で地区を特定して使用する場合でも、今回の橋下徹氏の出自に関する記事のようなものは当然ながら厳しく批判され、必要な場合は法的措置も必要であると考えます。また、「旧同和地区」に対して差別的意図を持ち、明確な人権侵害となる可能性がある記述・表現や行為についても道理に基づく批判を加える必要があります。

 しかし、明確な差別的意図も無く、実際に差別行為として現れなければ差別とはなりません。運動団体が支部名で特定の地区を明示することは勿論、学者・研究者が部落問題や同和行政について論文で書く場合、マスメディアが行き過ぎた同和行政を批判したり、「解放同盟」の行為を批判したりする場合に地区名が挙げられることは当然ながら許されるべきことです。 

 特に、具体的事実を挙げて論及しなければならない歴史・教育・文化・行政などの分野における調査や研究活動において使用される場合は当然ながら自由であるべきです。

 

4、朝日新聞は差別と批判を区別した報道を

 

 各種意識調査の結果を見ると、部落問題に限らず少数民族やニューカマーの人たちに対する偏見や不理解が存在することは事実であります。こうした課題を解決していくためには、自由に人権問題が語り合える社会的状況を作り出す必要がある考えます。

 しかし、部落問題に限っていえば、「解放同盟」のような暴力的な確認・糾弾と、それに追随する行政による上からの強制的な「同和研修」が長きにわたり行われてきたという歴史的経緯もあって、依然として自由に討論できるという状態にはありません。

 今回の特集記事の連載打ち切りは、せっかくの国民的討論の題材を提起しながら、朝日新聞は橋下徹氏に敗北宣言をし、肝心の問題点を「第三者機関」という「奥の院」にしまい込ませてしまったという印象を与える結果となりました。 

 私たちは今回の記事が「差別記事」であると指摘しましたが、そのことについて当然反論を受けることも予想し、ある意味それも期待しています。反論を受けた結果、「差別記事」であるという指摘は誤りである場合も予想されますが、その論議の過程こそが大切であると考えています。

 朝日新聞はよく「被差別者の側に寄り添う」という言葉を使い、「同和地区住民」や「解放同盟」などの行き過ぎた行為、誤った行為を擁護する報道をしてきましたが、私たち人権連神戸は人権団体(当事者・被害者団体)だから、自分たちの言い分はすべて正しいという立場はこれまでもこれからもとるつもりはありません。討論と対話による真理の探究という立場での問題の解決が重要なのです。 

 討論・対話による解決を促進するためには、人権団体の側も冷静な対応をすることが大切であると考えています。行政や企業、第三の権力といわれるマスメディアなどによる社会的影響力のある差別(人権侵害)と、「旧同和地区」が解消され、住民同士の交流が前進する中で派生する差別的言動とは厳密に区別した対応が必要であると考えます。

 国民同士の問題についてはあくまでも対話と学習によって解決すべき課題と認識すべきであり、運動団体が肉体的・精神的抑圧を加えることにより解決すべき対象ではありません。また、国民の間に時々見られる「差別的発言」の中には、行き過ぎた同和対策、「解放同盟」の「同和犯罪・利権あさり」や「旧同和地区住民」の生活態度などを批判している場合も多々あり、「差別・偏見」に基づく言動とは厳密に区分する必要があります。そして、正当な批判に対しては真摯に耳を傾ける必要があると考えています。

 

5、朝日新聞は部落問題が解決された状態を  
    
明確にする必要がある

 

 朝日新聞に限らず、マスメディアは部落問題の報道は非科学的であるばかりか主体性が欠如しています。その大きな理由には、部落問題の現状認識の誤りと合わせて、マスメディア自身が部落問題が最終的に解決された状態について明確な指針を所有していないからであると考えます。この根本的ともいえる問題点を是正しない限り、旧来の「解放同盟」理論依存の体質から逃れることは出来ないばかりか、今回のような「差別記事まがい」の報道を繰り返すことになることが容易に予想されます。

 地域人権連の前身である全国部落解放運動連合会は、かつて「21世紀をめざす基本方向」(1987年3月)の中で、部落問題が基本的に解決された状態を四つの指標(1,部落と周辺地域との格差が是正されること。2,部落問題に対する偏見や言動が受け入れられない地域社会をつくること。3,部落住民の生活態度・習慣にみられる歴史的後進性が克服されること。4,自由な社会的交流が進展し、融合・連帯が実現すること。)で明確にしました。そしてその四つの指標が基本的に達成されたとして、地域人権連に発展改組(2000年9月)しました。

 さらに 地域人権連神戸では、この発展改組を起点として、部落問題が最終的に解決された状態についても論議を重ね、部落問題が最終的に解決された状態を、「日本社会における社会問題が解決されなかったとしても、国民誰もが自らの出自・旧身分を意識することも、それによって不利益や人権侵害を受けることなく、職場や学園、地域社会において生活できる状態」と規定しています。

  以上の通り、部落問題を真に解決するために必要と思われる問題点や課題を整理し、その解決の方向性を提起させていただきました。貴紙が鋭意検討され、改善されることを切に希望するものです。

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