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「神戸市教員同僚いじめ問題」から考えてみよう -政治と官僚制度の「劣化」の原因-

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​「神戸市教員同僚いじめ問題」から考えてみよう​
​-政治と官僚制度の「劣化」の原因-​





 はじめに
 国は種々の装置ないし、制度を持っていますね。それを通じて国民を統制しています。その実際の実務を遂行するのは官僚制度ですから、国にとっては必要不可欠なもので、ここが崩れると国は溶解作用を起こします。
​ 「森加計問題」や、安倍首相主催の「桜を見る会」の弁護で登場した高級官僚たちの「忖度」「隠蔽」「虚偽」の姿勢はまさに「劣化」を示しているようで、この国の行き詰まりを感じさせます。すでにお気づきの方もたくさんおられるようですが、その背景にあるものはどうやら「利潤第一主義」で走り続けた資本主義社会の制度疲労、「劣化」があるようです。​


​1、「劣化・1」-神戸市の「教員同僚いじめ問題」​​

 昨年から今年にかけて、「烏の鳴かない日はあっても神戸市の不祥事が報道されない日はない」と揶揄されるほど神戸市職員・教師の不祥事が話題になり、巷では職員・教師は「劣化」しているという批判がよく聞かれるようになりました。
 私たちは神戸市職員とともに苦労して同和対策を全国の自治体に先駆けて終結したという誇りを持っていましたので、この間の状況については失望せざるをえませんが、新たな協働関係を構築していくためには原因の解明が必要と考え、今回は遠慮のない検証をさせていただくことにしました。
 ​「劣化」とは、物理的変化などにより品質や性能が損なわれたりすることで、そのものの価値が相対的に低下する現象を指します。​公務員や教師の品質や性能が低下したというのですから誠に厳しい批判ですが、神戸市職員労働組合の「ヤミ専従問題」、神戸市垂水区で女子中学3年生が自殺する事件が発生し、当時の市教育委員会の担当者が校長を指導し、自殺直後に同級生から聞き取ったいじめを裏付けるメモを破棄し、自殺といじめの真相究明を困難にした問題、そして、今回の「教員同僚いじめ問題」などを見ると、「劣化」と批判されても言い訳はできません。
 神戸市職員・教師の皆さんがこうした批判を聞けば、「劣化は一部にすぎない」という反論をするでしょうが、こうした問題は突発的に発生するような性質の問題ではありません。現場で日常的に生起していたはず、それを関係者が認知しながら、放置もしくはうやむやにしていたことから重大化し、表面化したものであると考えるのが妥当です。 
 ​市民の意見や社会的ルールを無視して、神戸市職員・教師の体面や利益を優先する。それが「劣化」なのです。​

※記憶力しか持ってない人間は、足し算しかできない人間と同じだ。​
(中島敦『中島敦全集(第2巻)』筑摩書房)






​2、「劣化・2」-萩生田光一・文部科学相の「身の丈」発言​​

 ​​「劣化」は神戸市の問題だけではないようです。​​ 
 2020年度から始まる大学入学共通テストでの英語民間試験について、「自分の身の丈に合わせて頑張って」という萩生田光一・文部科学相の発言が、教育界のみならず社会全体に波紋を広げました。 
​ あの加計学園問題で疑惑の中心人物であった萩生田さんが、よりにもよって文部科学相になったことに驚きました。さらに、受験生が「生まれ」によって「教育格差」を強いられている現実を是認したうえで、それを本人の志・能力・努力によって乗り越えろと言うのを聞いて強い絶望感に襲われました。​
​ 当然ながら国民の批判を受けて発言を撤回、大学入学共通テストでの英語民間試験を見送らざるをえなくなりました。それによって、マスメディアの批判は鎮静化しました。しかし、私たち「貧乏人団体」は「身の丈」という言葉には敏感です。心が痛みますから到底看過できません。この言葉の根底にある経済的弱者に対する侮蔑感を感じるからです。 ​
 「身の丈に合わない」という言葉には、「能力や器が役割、立場に合っていない」という意味がありますね。この言葉は、自分が自身の状況を表現する時には謙譲あるいは卑下する場合などに使われる場合がありますが、今回は、権力者中の権力者である文部科学相が「親の経済能力に合わせろ」という意味で使われた言葉ですから経済的弱者を侮蔑する、あるいは排除する言葉であることは間違いありません。
 所得格差を無視した英語民間試験という差別制度をつくった文科省の官僚、加計学園疑惑の文科相が「身の丈」発言するという異常さは「劣化」という言葉以外に説明がつきません。
 ​この「劣化」は安倍首相主催の「桜を見る会」でも露骨にあらわれています。​

※あの言葉はもちろん、思わず口からこぼれたのだが、思わず言っただけによけい重大なのだ。​
(ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』講談社)


3、「劣化・3」-「忖度」は官僚主義の「負の産物」​
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 以上のように政府および官僚の「劣化」は著しいものがあります。そうした劣化はなぜ生まれてきたのか考えてみましょう。
 官僚組織についてはマックスウエーバー(M,weber)が明確にしています。ウエーバーは「近代化」を実現するためには、規則によって系統づけられた明確な権限をもつ組織が必要なことを主張していますが、一方で、官僚主義は「負の産物」を生むことをアメリカの社会学者・政治学者たちが詳細な研究によって明らかにしています。 
 特に、ロバート・キング・マートン(Robert King Merton)による「官僚制の逆機能」についての指摘は有名なので紹介いたします。 
 ①規則万能(規則に無いから出来ないという杓子定規の対応)
 ②責任回避・自己保身(事なかれ主義)
 ③秘密主義(組織を守るための虚偽、隠蔽体質)
 ④前例主義による保守的傾向(改革を望まない)
 ⑤画一的傾向(多様な価値観の否定)
 ⑥権威主義的傾向(権威への従属、国民、市民への冷淡で横柄な対応)
 (参考『社会心理学』中央生協出版)
 以上の指摘から、政府官僚や神戸市職員・教師の「劣化」の原因を解明することができますね。同じ政党・首相による政権、あるいは同じ市長・同系市長が長期にわたり権力を担当する場合、その権力の維持および執行を、容易にするという目的のために官僚は結束します。その結果、​「権威への従属」「忖度」「秘密主義」が生まれ、ひどい場合は「虚偽」「隠蔽」までもが行われることになるのです。​

※慢心は人間最大の敵だ。(シエイクスピア・『マクベス』新潮社)​







​4、「劣化・4」―官僚主義の「負の産物」を生んだ原因は​​

 戦後、日本は民主主義国家への舵を大きく切りました。日本国憲法のなかで、法の下の平等、両性の平等、男女普通平等選挙権の保障などが明文化されるとともに、憲法第25条においては社会権・生存権の保障が規定され、日本が福祉国家として社会保障・社会福祉の拡充・発展に努力することを国の使命として掲げました。
 そうした中、労働組合運動をはじめ市民・民主運動は国民の基本的人権を職場、地域、学園に定着させるために運動をしてきました。そうした中で、平等の認識は大きく広がり、労働条件をはじめ社会制度も大きく改善されてきました。 
 しかし、今日では労働組合運動が官民ともに労使協調路線に走り、働く者が団結できない、たたかえない組合に衰退したため、正規社員と非正規社員という差別雇用が一般化され、外国人労働者の雇用が促進される中、労働条件の悪化、低賃金が固定化されてしまい、仕事(所得)による異常な差別社会が完成しつつあります。
 この差別社会が「劣化」の大きな原因になっています。過度な競争、過度な管理、長時間労働はストレスを生み、ストレスは人間同士に対立と抗争を生み出します。「ネット差別」などはその排泄物のようなものです。そうした社会では人間は過度に自己保身に走り、官民問わず官僚主義の「負の産物」はウイルスのように蔓延することになります。 
 この差別社会に対する理念が「平等」であり、平等社会の実現により解決します。特に、階級的・民主的労働組合の役割は決定的です。​​職場に階級的・民主的労働組合が存在していれば、神戸市の「ヤミ専従」も「教員同僚いじめ問題」も生起することはなかったかもしれません。​​

​※「不正」はお互いの間に不和と憎しみを作り出し、「正義」は協調と友愛を作りだす。​
 (プラトン・『国家』岩波書店)  




5、「劣化・5」-官僚の「劣化」を生んだ主体性のない国民​​​

 問題となっている「花見の会」の写真を見ると、安倍首相を囲んで楽しそうにしているお笑い芸人の方々が多いのに気づきますね。「面白くない世の中を笑い飛ばす」。確かに社会的貢献度は高いようです。​
 アメリカのミシガン大学「世界価値観調査」(world value survey 2001)によれば、日本が先進諸国の中ではもっとも「社会的孤立度」が高い国になっている。原因は旧い共同体が崩れて、それに変わる新しいコミュニティができていないからです。
 世界幸福度報告( World Happiness Report)では、日本は2010年代前半は40位台をキープしていましたが、後半には50位台に転落しており、2019年には過去最低を記録しています。
  『全47都府県幸福度ランキング2018年版』(寺島実郎監修・日本総合研究所ほか)によれば、総合指標で表される幸福度は20ある政令指定都市では神戸市は15位となっています。
  世界的に見ても日本も神戸も最悪な状況にあるようです。なぜか日本人は深刻ではありません。まだまだ「なんとかなる」「国や神戸市がなんとかしてくれる」と、考えて「笑っている」ようです。 
 この背景には、長年にわたる「政治は政治家まかせ」からくる主体性の欠如があるようです。それが今日の政府や神戸市における官僚主義の「負の産物」を増幅してきた大きな原因のようです。
 
​※ 主体性の欠如とはなにか?​
①自ら理解しようとする姿勢がない。(学習しない)
②自ら考え行動しない。(指示がなければ行動しない)
③消極的である。(自分の考えに確信がない)
④自分の能力に自信がない。(自分の能力を客観的に評価できない)

 官僚主義を健全に機能させるためには、官僚自身が近代的な人権認識を身に着けることが大切ですが、それには国民の政治への主体的な参加が不可欠となります。官僚たちの「劣化」を嘆く前に、国民自身も国政や市政のことを真剣に学習し、自らの考えを確立し、自信をもって発言し、行動することが大切です。
 官僚の「劣化」を作りだした責任の大半は主体性のない国民にもあるように思います。(反省!)

​※他人を咎めんとする心を咎めよ。​(清沢満之『清沢文集』岩波書店)


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