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国家の規制で「ネット差別」が消える社会はいい社会ですか? 女子プロレスの木村花さんの自殺と「ネット」規制

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国家の規制で「ネット差別」が
消える社会はいい社会ですか?
​女子プロレスの木村花さんの自殺と「ネット」規制​​​



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​はじめに キルケゴールの人間の「絶望」と「可能性」から​​​​​

 哲学者キルケゴール(1813年-1855年・デンマーク)は、著書『死に至る病』の中で、「人間には必ず死が訪れる。どんな人生を送ろうと、いつか死ぬ。だから人間はいつも絶望している」といい、同時に、人間は「可能性」によって生きられる存在とも言っています。
 「どんなにお金ができても、有名になっても、どうせ死んでしまう」のだからと考えれば絶望的になりますが、「いずれ金持ちになるぞ、いずれ有名になるぞ」と自分の将来の「可能性」を考えて生きている過程はどんなに苦しい生活をしていても人生は楽しいということです。
 強いストレスの状態にさらされると、気分を安定させる脳内神経の働きが悪化し、うつ病の状態が発症します。それをこじらせると自殺発生リスクが高まるといわれています。いつもはすぐに気持ちの切り替えができるような人でも、自分の将来の「可能性」を見失い、絶望すると、最終的には「自殺」という解決策以外、頭に浮かばなくなってしまうことがあるのです。
 自殺は極めて悲劇的な出来事であり、まわりの人間に深い衝撃を与え感情的にさせますが、極めて個人の複雑な精神活動によって発生するものであり、その原因を究明する際には慎重に行うべきであり、勝手に推量してはなりません。ましてや政治利用しようとするなどは悪魔の所行というべきものであり、厳に戒めるべきことです。




​​7月5日(日)鳥取県の大山に登る​​​​
前日の4日は梅雨前線が、鹿児島県、熊本県に豪雨をもたらし、大きな被害をもたらした。この日も再び梅雨前線は北上傾向にあり、被災地が再び大雨に見舞われている時間に登山とはなんとも後ろめたいが、​ボランティアに行くのには九州は遠く、コロナ禍のために県外からは受け入れていない。​
大山は昔から聖山と言われている山、被害がこれ以上広がらないよう祈りながらみんなと登ることにした。


1、女子プロレスの木村花さんの自殺と「ネット」規制​​


 木村花さんは5月23日に自殺(享年22)しました。自殺の原因は、2019年9月からネットフリックスで配信され、フジテレビでも放送されていた人気恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していた中での花さんの言動に対するSNSでの誹謗(ひぼう)中傷にあると言われています。

◯花さんの死はテレビ局の「やらせ」が原因?​​
 『週刊文春』(7月9日号)によれば、「花さんの死を契機に、政府は悪質なSNS投稿に対して罰則を含む法規制強化に動き出している。だが、事件の本質はそこにはない」として、取材班が取材した結果、花さんがSNSで誹謗中傷された原因として制作側が悪役プロレスラーの花さんを番組の中でも悪役を演じるように追い詰めていく演出があったと報道しています。
 花さんの死は本意ではない「やらせ」を要求され、葛藤し、苦しんだ末の死であったようで、演出された映像を見た一部の視聴者がSNSで誹謗中傷したことは主要な要因ではなかったようです。
 こうした事実を踏まえず、自民党が短絡的に花さんの死をネット上の「誹謗中傷・人権侵害」と位置づけ大騒ぎする姿はいささか便乗的で軽薄のような気がしますね。
 自民党は「森加計問題」、「桜を見る会」、特に「検事総長の定年問題」などでSNSが世論形成に大きな影響を与えていることに危機感を持ち、花さんの死によって、ネット上の誹謗中傷への批判が盛り上がっているのを利用して、言論規制、匿名での権力批判封じ込めに乗り出そうとしているのではないかという疑念が広がっています。

※人間は天使でもなければ、獣でもない。しかし不幸なことは、天使のように行動しようと欲しながら、獣のように行動する。
​パスカル(『パンセ』中央公論社)​​




​​​​​​​​​​夏山登山道から頂上へ​​​​​​​
夏山登山道の最初はなだらかな階段が続く、しばらくは杉の巨木の間を歩くことになる。やがて杉林はいつのまにかブナの林に変わる。
大山は標高1729m、中国地方最高峰の山で、「鳥取砂丘」と同じく鳥取県の自然遺産となっている。また、北西側から見た大山は、富士山に似ていることから「伯耆富士」(ほうきふじ)とも呼ばれている。
大山に息づく動植物と豊かな自然の景観により、登山者はもちろん観光者に四季折々の様々な姿をみせてくれる人気の山であるが、​この日はコロナと梅雨のせいか他の登山者にはほとんど会わなかった。​
大山の山頂へは様々なルートがあるが、実質の大山登山の頂上は弥山(みせん)となっている。
弥山は仏教の宇宙観にもとづく想像上の山岳である須弥山(しゅみせん)の略称で、全国各地にある。大峰山の弥山,厳島の弥山などがよく知られている。​
いずれにしても聖なる山なのだ。​​​



●詳しくは2018年10月11日・「人間愛の欠落した人権教育は必要か―神戸市垂水区の中三少女自殺から」を参照してください。​​


2、「ネット規制」へ自民党の素早い対応?​

◯規制ではなく最低限の改善が必要
 高市早苗総務相は記者会見(6月2日)で、花さんが死亡した問題を受け、当初予定した11月の総務省有識者会議の取りまとめを前倒し、7月に対策を取りまとめると明らかにしました。
 自民党は「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策プロジェクトチーム」(自民党PT・座長三原じゅん子参議院議員)を立ち上げました。その会合では、投稿者の情報開示どころか、匿名投稿の規制や侮辱罪などの厳罰化を求める声があがり、意外にも基本的人権を軽視してきた自民党が人権侵害に対して厳しい態度を示しているのです。
​ 「プロバイダー責任制限法」(インターネットに接続するサービス事業者の責任を明記した法律)には発信者情報の開示請求権が規定されていますが、実際に、発信者情報を開示させたり、損害賠償をもとめるためには、(1)SNS事業者などのコンテンツプロバイダーへの開示請求。(2)携帯キャリアーなどのアクセスプロバイダーへの開示請求。(3)損害賠償請求と、実質的に3段階の裁判手続きが必要になります。また、訴訟を起こしたいと思って弁護士に相談したり、警察に行っている間にアクセスログの保存期間(3~6カ月程度)が過ぎてしまい、加害者に逃げられてしまうというのです。​
​ ネット上の誹謗中傷について日本の警察に寄せられた被害相談件数は、2017年では11749件にのぼり、年々増加してきているそうです。花さんのように被害者の中には精神的苦痛により自殺・自殺未遂をした人たちもいるそうですが、前記のように、多くの場合は発信者の特定がプロバイダ―の壁に阻まれ特定できないようです。こうした事態を踏まえると悪質な発信者に反省を求めるためには素早く発信者を特定するための最低限の改善は必要のようです。




​​​ブナの倒木と異常気象​
夏山登山道の3合目付近にブナの巨木が倒れ、根がむき出しになっていた。倒れている状況から見ると、雨で地盤がゆるみ、木の重みを支え切れなくなって倒れたようである。
日本の森林で、古来の姿を保っている場所は少ない。いわゆる原生林というのは、日本には本当に数えるほどしか存在しない。ブナのような常緑広葉樹林は、特に人間の生活範囲に生息しているため、まとまった面積が残っている場所はほとんど皆無らしい。
大山は修験道の山岳信仰に守られ、聖山として大切にされてきたので、昭和の後半までは山頂付近まで鬱蒼とした原生ブナ林が残っていたという。
ここにも人間の生み出した異常気象の脅威が迫っているように感じるのだ。​​​​​



​◯「誹謗中傷・人権侵害」という言葉に騙されるな​​

 SNSは、普通の人でも政治権力やマスメディアと対抗しうる情報伝達を可能にする重要な手段として定着し、中国の支配強化とたたかう香港市民の大きな武器となっていることから見ても、個人の表現の自由は自由・民主主義社会を維持する基本的条件となっています。ゆえに行き過ぎた規制、罰則はさけなければなりません。
​ 自民党が法改正の根拠としている誹謗中傷とは、「根拠のない悪口を言いふらして、他人を傷つける」ことですが、「根拠のない悪口」というのは一見すると科学的なようですが、現実社会においては明確に定義することは困難です。​
 政治家の秘書や企業の社員が内部告発した際にみられるように、「根拠がある」告発であっても告発された側が「根拠のない」告発と主張し、名誉棄損として、資金力に任せて訴訟を起こせば、裁判の判決がでるまでは告発人が加害者となり被告人にされてしまうのです。
 さらに、発信者の情報が簡単に開示されるようになると、例えば、「森友問題」の時に数多く発信されていた「安倍首相の奥さんが用地取得の便宜を図った」などという記事は「根拠のない悪口」としてすぐ削除されるかもしれません。下手すれば訴えられることになります。
 また、花さんのケースのように「やらせ」で煽られて誹謗中傷した発信者も、すべて加害者とされ、罰則の対象にされる可能性も出てきます。
 本来、「誹謗中傷・人権侵害」は、社会的弱者を守るべき言葉のはずですが、現実社会では政治家や企業など権力者や富裕層も利用できる便利な言葉でもあることも認識しておかなければならないのです。

※善や悪はただの名目にすぎず、容易にどちらにでも移し変えることができる
​エマーソン(『エマーソン論文集』岩波書店)​​

●詳しくは2019年11月21日・「『神戸市教員同僚いじめ問題』から考えてみよう -政治と官僚制度の「劣化」の原因-」を参照してください。




​​​​​​ブナ林を包む深い霧のなか​​​​
登山道を登るにつれて霧が出てきた。「もののけ」の世界であるが、残念ながら何も出ない。
そこで「もののけ」について考えてみた。​「もののけ」というのは「物の怪」からきており、人間の生命に対する「ものの気」をさし、超自然的な存在を承認する言葉らしい。​
もともとは古代人の「もののけ」は自然に対する尊敬と共存の思想なのだが、平安時代の頃から災いや祟りを引き起こす悪神を「もの」と表し、人間・生物に幸福安泰や恵みをもたらす善神の敵対概念として用いはじめたのだ。
人間は豊かに暮らすために自然を利用してきたが、「真の豊かさとは何か?」を考えることなく、無制限に欲望をかなえることが豊かさを実現することであると勘違いし、「もののけ」を敵にしてきた。
きつい登り道を歩きながら、新型コロナウイルス、異常気象は「もののけ」による反撃かもしれないと考えた。​​



​​3、「ネット部落差別」も規制されることになる​​

​◯悪質な「ネット部落差別」は無くせるか​
​​ ネットの発信者の情報が簡単に開示され、罰則化されると、部落差別解消推進法成立の根拠となった「ネット部落差別」もこの規制にかかります。「○○死ね!」「○○殺すぞ!」などという刑事犯罪として告発できるような常軌を逸した「強迫的差別者」、『部落地名総監』を拡散して喜んでいるような「変質的差別者」も規制しやすくなり、告発しやすくなります。​​
 すでにネット上の差別記事の削除に乗り出している地方自治体や部落解放運動団体はどんどん削除要請を出し、悪質な情報発信者は氏名や住所などの個人情報を公表され、社会的バッシングを受けることになるかもしれません。また、それでも反省しない場合には確認・糾弾されるかもしれませんね。そうなると、こうした人たちは「闇サイト」に逃げ込み、巧妙に発信するかもしれません。
 大切なのはこうした悪質な情報発信者に付和雷同してきた無理解からくる「ネット部落差別」発信者が正しい理解をすることで、悪質な情報発信者が社会的に孤立することであると考えます。

​◯無理解からくる「ネット部落差別」はなくせるか​
 こうした悪質な発信記事とネット上に部落問題に関連して発信されている多くの「部落差別発言」の類は明確に区別されなければなりません。
​​ 多くの記事は封建社会における身分制を起因とする差別認識からでなく、現代資本主義社会において人権と人格を破壊するような経済格差を強いられ、生活、文化、教育が貧困化する中で生まれている不平不満が政冶・経済変革への思想と結びつかず、そのはけ口として社会的弱者への攻撃の一つとして「部落差別発言」に転化したもので、その内容を検証すると、「幽霊話」のように、現実の部落問題解決の到達点と乖離したものが多く、非科学的な人権・同和教育と社会的合理性を失った同和対策がだらだらと長期化してきたことが要因となっているようですから、こうした発信記事は、とても「誹謗中傷・人権侵害」として定義づけられるような代物ではありません。​​
​​​​ むしろ私たちはネット上のこうした「無理解・誤解」から発信される記事については、政府、地方自治体、運動団体は自らの過失責任として自覚すべきであり、自らの理論・政策を鍛え上げ、持続的に科学的な部落問題をネットで発信し、対話と説得を基本姿勢にして「無理解・誤解」の解消に努力すべきであると考えます。​​​​
 この過程こそが、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(平成12年)による国民を一律的に差別者とする官制の教育・啓発を有名無実化し、低迷する自主的学習運動を活発化する機会なのです。

​※世間に存在する悪は、大半がつねに無知に由来するもので、明識がなければ、善い意志も悪意と同じほどの多くの被害を与えることもありうる。​
アルベール・カミュ(『ペスト』)



​​​​​​​霧が晴れるとキアゲハ(並揚羽)が出現​​​​​​
6合目を過ぎるとブナの森林地帯を抜けたこともあってか、霧は晴れていた。そんな中、目の前をゆつくりと数匹の蝶が舞いはじめた。アゲハチョウである。
​「妖精だ!」と思った。​
キアゲハはナミアゲハより前翅のつけ根が黒ずんでいて名前どおり黄色みが強い。日本の家紋にもよく使われており、一番有名なのは平家である。だからといってキアゲハの家紋を使っている家がすべて平家の子孫とはならない。江戸時代には庶民が幕府や大名以外の家紋をつけることはほぼ自由だったのだ。
大山は動植物だけでなく、1000種を越える昆虫、日本に生息する野鳥のうちその3分の1強が生息するといわれているのだが、いつまで守れるのだろうか。​


​●詳しくは2018年04月19日・「消えゆく「部落民」―心のゴースト④​​​​ ネット規制―あなたの「差別と偏見」が国家支配に利用される」を参照してください。




4、必要なのはソーシャルメディアの自己規制
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 社会の進歩には表現の自由は不可欠であり、為政者が為政者の都合に合わせて規制を強化すれば、政治が間違った方向に向かったときに軌道修正は働かなくなります。何が誹謗・中傷に当たるかは個別事案ごとに当事者間で議論するのが基本であり、公権力の厳罰を背景にして介入を強めると言論空間が委縮することになります。
 ネットに掲載された記事を「誹謗中傷・人権侵害」になるとして事前に規制するというのは「誹謗中傷・人権侵害」に当たらない意見をも封鎖する可能性があります。特に、政治家や企業への正当な批判まで封じ込められてしまう危険性があります。
 こうした危険性を踏まえると、まず行うべき対策は、
①まずSNS各社が自主規制することです。トランプの人種差別発言をめぐり自主規制はすでに始まっており、すでにフェイスブック日本法人やLINEなどSNS各社で構成する一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構は6月26日に発表した緊急声明で、名誉毀損や侮辱を意図した投稿を禁止し、違反者のサービス利用を停止するなどの対応を徹底すると表明しています。
​​②プロバイダーに対する発信者の速やかな情報の開示については、私人間において明確に名誉棄損に当たり、刑事事件にも該当するような「悪質な発信」についてのみ限定して行うことにし、「根拠のない悪口を言いふらしで、他人を傷つける」などという曖昧な定義による規制はおこなわないことが大切です。​​
③政治家や企業などの権力者が開示を請求した場合にプロバイダーが断れる権利も明確にしておく必要があります。権力者は国民の批判を常に真摯に受け止める側にいますから、「疑惑」や「辞めろ」などという批判にさらされることがあります。それを「誹謗中傷・人権侵害」という曖昧な定義でたちまち削除したり、罰則を与えることはSNSの事実上の統制となりますから警戒する必要があります。

 以上のように日本のSNSは重大な局面に差しかかっているようです。こうした事態を生み出したのは憎悪と敵意から生まれる「悪質な発信」にあります。私たちは「ネット差別」はSNSへの権力介入を生むと警告してきましたが、残念ながら事態は深刻化しているようです。
 今後提出される政府自民党の「SNS規制法」(仮)に注目し、表現自由を守るために理性的な発信を続けましょう。
 
​※自由とわがままの境は、他人の妨げをなすとなさざるとの間にあり。​
福沢諭吉(『学問のすすめ』岩波書店)




​​​​​​​​​​​​​​​​頂上は工事中でし​た​​​​​
8合目を過ぎると、国指定の天然記念物に指定されている「キャラボク」と呼ばれる常緑の低木が広がり、登山道は木道に変わる。広さ8ヘクタールのキャラボクは圧巻!
しかし、木道は霧に濡れているために滑りやすくなっているので、下手をするとスッテンコロリとなる。木道の外は場所によっては断崖。​落ちればあの世で本物の須弥山を見ることになるので慎重に歩いた。​
木道を登りつめた先はいよいよ山頂、山頂からの景色は360度。美保湾から出雲地方までの大パノラマが開けたはずだが下界は靄の中、なんと山頂は工事中であった。
九州豪雨のさ中に登山したことに対する小さな天罰か?と思った。こんな山頂でそう思える自分がいることか嬉しいと思った。​​​​


●詳しくは2019年06月05日・「差別とたたかえる人、差別をもてあそぶ人 ​-若一光司さんと長谷川豊さんの人権認識の落差を検証する-」を参照してください。​​​​
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